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平岡康裕氏インタビュー[最終回]

-エスパルス退団後はベガルタ仙台へ加入しましたが相手チームから見たエスパルスというのはいかがでしたか?

2016年に仙台へ期限付き移籍をしたのですがその年はエスパルスがJ2だったので対戦がなくて、2017年に完全移籍ということになって最初に対戦(2017年4月20日第9節)したのがアイスタでした。何か不思議な感覚でアウェー側のロッカーに入って、ウォーミングアップ中にも今まで聞いていたサンバのリズムがある中でピッチに立ったのは何か不思議でした。でもやっぱり「負けたくない」という気持ちが強かったのは覚えていますね。試合は3-0で勝たせてもらいました。今思うと僕がエスパルスにいた頃は仙台に対してはめちゃくちゃ強かったですし、仙台に移籍してから自分が出場した試合ではエスパルスには負けてなかったですね。何か不思議な相性がありました。

-アイスタでの試合はやりにくくなかったですか?

やっぱりありましたね。独特な雰囲気の一体感があるじゃないですか。それで選手たちをリズムに乗せるあの応援というのは、アウェーとしてあのスタジアムに来ると嫌なものでしたね。逆にエスパルスの選手時代はあのリズムを聞くだけで自然と動けるみたいな感覚になっていたと思います。

-ただ、観客席が近いことでヤジやため息も聞こえて来て、アイスタでプレーするのはエスパルスの選手でも気になる選手はいたと思いますが、平岡さんはいかがでしたか?

そうですね。でもそういう声やため息も逆に反骨心に変えていましたね。「プレーで黙らせてやる」くらいの気持ちにはなっていました。あとアイスタのピッチは荒れた状態というのがなかったことが一番凄いなと思っていました。どれだけ雨が降ったとしても水たまりができないという…。プロになっていろいろなピッチでプレーしましたけど間違いなくトップレベルのピッチでしたね。

-仙台から昨年に愛媛FCへ移籍しましたが、愛媛へはどういう経緯で移籍されたのですか?

仙台から契約満了の通達があってから他からの話がなくて…。まあ年齢的なこともあったと思いますけど、そうしているところに「愛媛がセンターバックを探している」ということでタイミングが合った感じですね。ただ、出場数は少なかったですね、7試合くらいかな…。J3ということで求められることがちょっと違った感じでしたね。

-そして2023シーズンで現役を引退したわけですが、引退を決めた理由は?

やっぱり体とメンタルのバランスですかね。仙台を退団したシーズンは30試合くらい出場していたので、「まだやれる」というメンタルを持っていたのですが、愛媛で1年やってみて、リリースが出ない程度のケガがちょこちょこあたりして、今までとは違うなと感じていました。これまでであればごまかしながらやれたと思うんですけど、100%でできないのにやっていることが自分の中で納得できなくなってしまったというのが現役引退を決めた一番の理由ですね。

-引退を決意することは簡単ではなかったと思いますが?

でも、割とそこはすんなりと受け入れましたね。自分としても「よくここまでやれた」というのがありましたから…。エスパルスに入った当初の面子を見て、多くの代表選手が在籍していたエスパルスに入団して感じたレベルの中で、自分が19年間も現役でやれるとは思っていなかったですし、ここまでやって来たわけだしもう十分やったなと。自分として節目と感じたのは10年を超えた時に「もう10年、20年現役でやれれば」ということを思っていたので、それに近いくらいやれたことは自分の中では満足して終われた感じです。

-引退することは誰かに相談しましたか?

いや、基本的に僕はそういうことは相談しないタイプなので…。家族には引退を決めたあとに「やめるよ」と伝えました。これまでも自分が決めた道を進むという感じでしたから、今回も同じでした。

-最近のエスパルスの試合はご覧になっていますか?

時間が合わなかったりしてリアルタイムでは見られないことの方が多いので、ハイライトで観たり、たまに地上波でやったりした時に観たりしています。

-J2二年目ということですが、今のエスパルスを率直にどう見ていますか?

今年にJ1へ昇格できないと難しくなってしまうのではないかなと思っています。それはエスパルスだけではなくて、どのクラブでも元J1のチームが2年、3年昇格できないとなると、経営面や選手確保という面でも難しくなってしまうので…。エスパルスにとって本当に今年は勝負の年だと思いますね。チームとしてはバランスの取れたメンバー構成じゃないかなとは思います。でも、アウェーでなかなか勝てないということがありましたけど、そこで勝ち点を取りそこなわなければ、今のエスパルスであれば昇格はできるのではないかと思いますけどね。

-戦術面ではなかなか形が見えないということも言われていますが?

僕は秋葉(忠宏)監督がどのようなサッカーを求めているかを知らないのでどうこう言える立場ではないのですが、どのチームでも戦術の上に選手の個の部分があると思います。今のエスパルスは乾(貴士)選手がいて北川(航也)選手がいて、あとは外国籍選手が違いを見せていることが武器になっているのであればそれはそれで良いと思いますし、失点を少なくするには個というよりはチームの守備コンセプトを徹底すれば良いと思います。攻撃に関して個の力で打開できる武器があるということは、どこのチームも持っているものではないのでそれを生かすべきだし、そこに関しては特に問題はないのかなと思います。

-今のまま続ければ良いと?

J2だと今年は38試合ありますけど、その中で理想の形で勝つ試合なんて数試合あるかないかですから、そういう難しい試合で個に頼る部分というのは多くなると思います。特にJ2なので…。ただこれがJ1に昇格した時に、また個だけに頼るサッカーをしていると厳しい戦いが続いてしまうと思うので、そこは難しい部分なんですけど…。でも、今のエスパルスのサッカーは「戦術ありきの個」だと僕は思っているし、僕が見た試合だけで言えばそれぞれに戦術がハマって勝った試合だと思っています。

-アウェーでなかなか勝てないのは何か原因があるのでしょうか?

そのシーズンによって違ったりするんですよね。ホームで勝てないシーズンもあるし…。だから分からないですけどメンタル面もあると思いますよ。前日に移動するということもあって、選手本人は思ってもいない部分で疲れてしまっていたり、体が重くなってしまったりしているかもしれないですね。ましてやJ2なら新幹線もグリーン席ではないと思いますしね。

-アウェーということを気にし過ぎかなというのもありますが?

それはあるかもしれません。ホームで連勝しているのにアウェーで連敗してしまうと、「またアウェーで…」と変なメンタルになっていたのはあるかもしれないですね。

-平岡さんもアウェーだとそういうことがありましたか?

全てではないですけど試合によってありましたね。「今日は体が動くな」という試合もあれば、「今日は重たいな」というのは全然ありました。特にアウェーの試合では。ホームの場合は移動もないですし、試合前の数日も同じルーティンで過ごせますし、自分の感覚で時間も使えて、家族とも一緒に居られて、いつも通りに自分の家から試合に行けるのは、やはりメンタル的にも落ち着けるというのがありますね。だからそういう面ではアウェーは少し違うかなと思いますから、そういうことも影響しているのかもしれないですね。

-それでは、エスパルスサポーターへメッセージをお願いします。

プロのキャリアをスタートさせてもらったクラブですし、どんな形でもいいですからどこかのタイミングでエスパルスの力に自分がなれるようにと思っています。今は指導者としての自分の力をつけているところなので、いつになるかは分かりませんがまた皆さんの前に戻って来られるように今を頑張りたいと思います。静岡には居ますから、どこかで見かけた際には気軽に声を掛けていただければ僕としては嬉しいです。またラジオの解説以外でもアイスタへ行こうと思っていますので、その時にもお会いできればと思います。とにかくエスパルスがJ1へ復帰できるように祈っていますので、クラブ、チームにとってサポーターの皆さんの力は絶対に必要となりますから、これからも熱い後押しをよろしくお願いします。

-最後に岳南Fモスペリオのサポーターにもメッセージをお願いします。

いつも応援ありがとうございます。選手たちは精一杯持てる力を発揮しようと頑張っています。今シーズンのホームゲームも残り少ないですが、クラブとしては1試合で1000人の観客数を目標に取り組んでいます。試合当日の天候があまり良くないこともあり目標にはまだまだ遠いですが、是非試合を観に来ていただければと思います。エスパルスサポーターの方も、プロではないアマチュア選手の頑張っている姿を観ていただきたいと思います。選手たちはやっぱり観客が少ないよりも多い方がやる気も増しますし、エスパルスのような試合は観せられないかもしれないですけど、別の意味でエスパルスの試合では得られないものもあると思っていますので、僕に会いに来るついでで結構ですからよろしくお願いします。あとはクラブを応援していただけるスポンサー様は随時募集しています。僕に声を掛けていただければすぐにご挨拶に伺いますのでこちらもよろしくお願いいます。

-今回はありがとうございました。益々のご活躍を期待しております。

ありがとうございます。また取材に来ていただけるように頑張ります。

 

プロフィール

1986年生まれ
静岡県富士宮市出身。
静岡市立清水商業高等学校(現静岡市立清水桜が丘高等学校)から2005年に清水エスパルスに加入。2008年に札幌へ期限付き移籍したが翌年より清水に復帰し主力として活躍。フェアプレー個人賞を受賞するなど安定感あるセンターバックに成長した。その後に仙台、愛媛でプレーし、2023シーズンで現役を引退。現在は、富士・富士宮をホームタウンとする東海社会人サッカー1部リーグ、岳南Fモスペリオで指導者としてスタートし、地元を盛り上げようと奮闘している。